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『ロラン・バルト 喪の日記』の新装版が12月10日に発売。

BOOK

『ロラン・バルト 喪の日記』(石川美子 訳)の新装版が2015年12月10日にみずず書房より発売する。
『ロラン・バルト 喪の日記』

「1978年8月18日
彼女が臥せっていて、そこで亡くなり、いまはわたしが寝起きをしている部屋のその場所。彼女のベッドの頭部をくっつけてあった壁に、イコンを置いた――信仰からではない――。そこのテーブルの上には、いつも花をかざってある。それゆえに、もう旅をしたくなくなっている。そこにいられるように、けっして花をしおれさせたりしないように、と。」

最愛の母アンリエットは1977年10月25日に亡くなる。その死は、たんなる悲しみをこえた絶望的な思いをもたらし、残酷な喪のなかで、バルトはカードに日記を書きはじめた。二年近くのあいだに書かれたカードは320枚、バルト自身によって五つに分けられ『喪の日記』と名づけられた。
とぎれとぎれの言葉が、すこしずつかたちをなして、ひとつの作品の輪郭をえがきはじめるのが日記からかいまみられる。そうして、母の写真をめぐる作品『明るい部屋』が生まれたのだった。
『喪の日記』は、最晩年のバルトがのこした苦悩の刻跡であり、愛するひとを失った者が「新たな生」をはじめようとする懸命の物語である。そこから浮かびあがってくるのは、言葉で生かされている者が言葉にすがって立ち上がろうとする静やかなすがたなのである。

ロラン・バルトはフランスの哲学者。エクリチュールについての考察が有名で、文学や演劇などを軸に享受する者の解釈の可能性を探る論考が多い。国内でも『零度のエクリチュール』、『物語の構造分析』を始め、『モードの体系─その言語表現による記号学的分析』や『表徴の帝国』など、数多くの作品が邦訳されている。

『ロラン・バルト 喪の日記』はロラン・バルト没後約30年後の2009年2月にスイユ社から刊行されるや、1年足らずの2009年12月に石川美子の手によって翻訳、みずず書房から出版された。長らく版元品切れ状態だったが、今回ロラン・バルトの生誕100周年にあたり、新装版として復刊される。

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