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アングレーム国際漫画祭 2016

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Written by ORE ORE

『アングレーム国際漫画祭 2016』がフランスのアングレームにて2016年1月28日~1月31日にかけて開催された。

以前記事で紹介した通り、今年の『アングレーム国際漫画祭 2016』は昨年2015年に最優秀賞を受賞した大友克洋をフィーチャーしており、南画風のキービジュアルを描きおろしたり、フランス内外の漫画家42人が参加した『TRIBUTE TO OTOMO 大友克洋オマージュ展』なども催された。ちなみに展覧会の図録『TRIBUTE TO OTOMO』はシリアルナンバー入りの999部限定で、グレナ社から2月2日に出版されている。
第43回アングレーム国際漫画祭TRIBUTE TO OTOMO

TRIBUTE TO OTOMO BannisterTRIBUTE TO OTOMO Simone D’ArminiTRIBUTE TO OTOMO Guillaume Singelin

他にもベルギーの漫画家モーリスの『ラッキー・ルーク』に関する展示『L’art de Morris モーリス(ラッキー・ルーク)展』、バスティアン・ヴィヴェスバラックミカエル・サンラヴィルによる2015年度の長編作品賞受賞作品である『ラストマン』の『LASTMAN : UNIVERSE(ラストマン)展』、20世紀イタリアを代表する漫画家であるユーゴ・プラットの『Hugo Pratt (ユーゴ・プラット)展』、独立系出版社『ラソシアシオン L’Association』を設立し、実験的漫画集団『OuBaPo (ウバポ )』で中心的な役割を果たした漫画家・編集者・評論家であるジャン=クリストフ・ムニュに関する『Jean-Christophe Menu (ジャン=クリストフ・ムニュ)展』、ドイツの芸術家集団による個展『InterDuck展』、香港を代表する漫画家、利志達(リー・チータッ)の展示会『Li Chi Tak, un sorcier à Hong Kong (香港の魔術師、利志達)』、日本からは昨年3月から刊行が始まった小学館の新雑誌『ヒバナ 展』など数多くの展示会が開催された。
モーリスラストマン   ユーゴ・プラット ジャン=クリストフ・ムニュInterDuck  利志達ヒバナ

『アングレーム国際漫画祭』には4つのセレクションと9つの賞があり、セレクションはノミネート作品群のことで、今年は公式セレクションが40作、子ども向け作品賞セレクションが10作、遺産賞セレクションは7作、ミステリ作品セレクションは5作ノミネートされた。

賞はそれぞれ、公式セレクションからフェスティバル審査委員団が審査を務める最優秀作品賞審査員特別賞シリーズ(長編作品)賞新人賞があり、同じくフェスティバル審査委員団が審査を務める遺産賞セレクションからの遺産賞。公式セレクションから一般読者の投票で受賞作品を決定するキュルチュラ読者賞、ミステリ作品セレクションから独自の審査員団によって選出されるSNCF(フランス国鉄)ミステリ作品賞、子ども向け作品賞セレクションから8歳から12歳の子供たちで構成された審査員団によって選出される子ども向け作品賞、非商業出版による作品を対象に独自の審査員団によって選出されるオルタナティブ賞となっている。
なお日本からは『亜人』(三浦追儺 作/桜井画門 画)、『ちいさこべえ』(望月ミネタロウ)、『うみべの女の子』(浅野いにお)、『聲の形』(大今良時)、『東京うばすて山』(辰巳ヨシヒロ)、『蟲たちの家』(楳図かずお)などがそれぞれのセレクションにノミネートされている。

今回最優秀賞を受賞したのはベルギーの作家Hermannエルマン)。1960年に執筆を開始し『Bernard Prince』でヒット。ローマ時代や中世ヨーロッパなど様々な時代を舞台に、ジャンルは西部劇から近未来SFまでと、幅広く数多くのアクションアドベンチャー作品を発表している。代表作は『Comanche』や『Jugurtha』、『Les Tours de Bois-Maury』など、得に『Jeremiah』は1979年から今まだ続いており、現在34巻を数える人気シリーズだ。
エルマンエルマン

ちなみにこの世界的に権威のある『アングレーム国際漫画祭』は、一部を除いて日本の作家や編集者にとって未だに注目度が高くないというのが事実だ。これは日本のマンガが独自の文化として確立、成長を続けているからかもしれないが、同時に閉鎖的な文化であることの証左なのかもしれない。最近でも『Levius -レビウス-』や『僕のヒーローアカデミア』など海外漫画の様々なエッセンスを吸収した作品が生まれ、読まれている中この注目度の低さは些か不自然さを感じる。日本のマンガはその独自の文化を維持しつつ世界に開かれる価値や強度のあるものだし、今後はより日本のマンガ業界が世界的視野を確立していくことを願っている。
今年は惜しくも日本からの受賞者はいなかったが、新たな世界の作家との出会いや、日本の作品がどのような注目を受けるかなど、来年も非常に楽しみだ。

公式HP:http://www.bdangouleme.com/
その他の受賞作:http://www.bdangouleme.com/953,palmares-officiel-2016

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