OREメディア編集部が選ぶ2015年ベストアルバム10枚
12月31日 OREメディア 編集部
最終日である本日は、我々OREメディア編集部による2015年のアルバムベスト10作を紹介します。
Sufjan Stevens 『Carrie & Lowell』
アメリカはミシガン州のシンガー・ソング・ライターSufjan Stevens、その7枚目のスタジオアルバムで、スランプを乗り越えて完成された前作『The Age of Adz』のような複雑さではなく、シンプルに洗練されたものになった。今までの壮大なイメージから比較するとリラックスしてラフな印象を覚えるが、隙のない、そして感情に直接響いてくる作品に仕上がっている。まるで聴く者の心臓を弦に、もしくは歌声に共鳴する鐘のようにされたかの如き感動がある。
Holly Herndon 『Platform』
サンフランシスコのコンポーザーHolly Herndonの最新作。2011年、2012年と『Movement』などリリースを横目にしつつあまり注目をしていなかったのだが、2014年のシングル『Chorus』や『Home』が衝撃的だった。これらの曲を収録した本作は、彼女の現在の集大成であるとともに、電子音楽と声の親和性による今までと異なった新たな可能性を提示しているように感じた。
Jalen 『The Shape of Jalen to Come』
Jalen Tuna。Iggy PopやJames Brake、果てはGil Scott-Heron(!?)までをも口寄せ、あれよあれよと移り変わる酔いどれ感極まりない歌唱が、ノリ重視で作られたであろう荒く野蛮な(時にメロウな)トラックの上で暴れまわる、非常にフリーキーかつパンクな傑作。コーチェラの一幕からサンプリングされたと思しき歓声に包まれ、歌いながら崩れ落ちていくようなラストは鳥肌必至。しかし、2013年の前作『JUST BEIN ME』と同じく、本作も削除されてしまった。
(今作『The Shape of Jalen to Come』の試聴がなかったため、前作『JUST BEIN ME』より『OLD DAYZ』。)
DJ Paypal 『Sold Out』
ベルリンのJuke/FootworkプロデューサーDJ Paypal、今作『Sold Out』は彼の初めてのアルバムで、Flying Lotusの主催するBrainfeederよりリリースされた。悪ふざけとクールをBPM160のメトロノームの針のように行き来するアンビバレンツな作品。圧倒的な聴きやすさと笑えるほど踊れる魅力的な内容だ。
Meridian Brothers 『Los Suicidas』
Meridian BrothersはEblis Javier Alvarezを中心としたコロンビアの5人組。脳が溶けるようなサイケデリックなモンド・ミュージックを得意とする彼らの最新作。今までの作品同様に目玉がグルグルになったようなトロピカルサウンドで一気に彼らの世界観に引きずり込まれる。
James Blackshaw 『Summoning Suns』
ヘイスティングスのギタリスト、James Blackshaw。12弦ギターのフィンガーピッキングによるミニマルで叙情的な楽曲を得意とする。夜に煌めく銀粉を撒くような美しさが特徴だったが、今作の『Summoning Suns』は自身の歌声を全面的に導入し、そのタイトル通り朝日の如き暖かさと柔らかさを備えた作品となっている。SlowdiveのSimon Scottをドラマーに迎え、野田薫や森は生きているなどをフィーチャーした日本語の歌唱なども行い、従来の彼のスタイルとは違う新たな美しさを提示した。
Jlin 『Dark Energy』
インディアナ州ゲーリー出身の女性Juke/FootworkプロデューサーJlin、その1stアルバム『Dark Energy』。彼女ならではの解釈で拡張されたFootworkを展開しつつ、非常に激しい感情で作られている快作。今作はサンプリングを使用せず、全てオリジナルの素材で作られているらしく、強い意気込みを感じる。
Mount Eerie 『Sauna』
Phil ElverumによるプロジェクトMount Eerieの3年ぶりにして7枚目のアルバム『Sauna』。静謐さと激情を擁する傑作。ドローンやミニマル・ミュージックを背景に囁くような歌唱が、凪いだ水面の波紋のように繊細な感動を呼び起こし、激しいディストーションが感情に火を点ける。楽曲も1分のものから13分にわたる曲が混在しており、ヴァリエーション及び時間的な緩急が、アルバムを一個の長大でコンセプチュアルな作品として一層特徴づけている。
Julia Holter 『Have You In My Wilderness』
LA出身のシンガー・ソング・ライターJulia Holterの最新作。『Tragedy』や『Ekstasis』でみられたExperimentalさは影を潜め、シンガー・ソング・ライターとしての頭角を現した記念すべき作品。個人的に彼女の過去作が非常に好みの為そこはかとない淋しさを覚えるが、この成熟とフレッシュさを併せ持つデリケートで特異なアルバムは、不思議なドメスティックさを備えており、自然と日常の中に溶け、ほんの少しだけ一日を特別にしてくれる。
Rupert Clervaux & Beatrice Dillon 『Studies I-XVII for Samplers and Percussion』
ロンドンで活動を行うアーティストRupert Clervaux & Beatrice Dillonによる作品『Studies I-XVII for Samplers and Percussion』。ミュジーク・コンクレートの影響や、クセナキスのパーカッション作品を髣髴とさせると同時に、近年の電子音楽の影響も見られる非常に聴き応えのある内容となっている。1分~2分程度のミニマルな楽曲群は不思議と耳に馴染み、瞑想的な状態を惹起する。
OREメディアでは、今回たくさんのアーティスト・事務所の方にご協力いただき、12月1日~30日にかけて、アーティストの選ぶベストアルバム10枚を連載することができました。
それぞれの選出作品やコメントは非常に興味深く、リスナーとしても新たな発見があり、我々だけでは決して成し得なかった素敵な企画となりました。
参加してくださった皆様には改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
来年もOREメディアは継続してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。
それでは、良いお年をお過ごしください!
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