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久保田晃弘が選ぶ2015年ベストアルバム10枚

10 BEST ALBUMS OF 2015

12月8日 久保田晃弘

今回は、多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コース教授/工学博士であり、様々なアートプロジェクトやライブパフォーマンスアート、執筆等も行う 久保田晃弘氏による2015年のベストアルバムをご本人のコメントと共にご紹介。

 


 Mark Guiliana Jazz Quartet「Family First」


冒頭の一曲だけでも必聴だが、Alternate Takes も含めて聞けば聞くほど、何度も奥深く味わえる。伝統芸や古典ではなく、未来の音楽としてのジャズ。音楽の革新はいつもリズムから始まる。そうした意味で Vijay Iyerの「Black Staff」(ドラムはMarcus Gilmore)と Robert Glasperの「Covered」(ドラムはDamian Reid)も合わせて(比べながら)聞きたい。

http://player.ecmrecords.com/vijay-2420

http://www.bluenote.com/artists/robert-glasper/covered-the-robert-glasper-trio-recorded-live

 


Henry Threadgill Zooid「In for a Penny, In for a Pound」

In for a Penny, In for a Pound

1975年にAIRで鮮烈なデビューを飾ったヘンリースレッギルも、それからもう40年。強靭な音色と超絶なリズム感の果てに到達したのがこの世界。作曲という概念を超えて、一体どうやったらこんなアンサンブルを組織できるのか(譜面とリハを見てみたい)。どこで始まるのか、どこで終わるのか(そもそも、なぜ一斉に終われるのか)など、謎に満ちた、それゆえ可能性に溢れた今日最も優れた創造的音楽のひとつ。

 


Syberen Van Munster「Plunge For Distance」

http://www.syberenvanmunster.com/

今年もまた、ジャズの世界でも多くの新人がデビューした。Syberen Van Munsterはアムステルダム出身のギタリスト。ジャズと4ビート、ジャズとブルーノートが無関係になった時代から出発し、40年後には果たしてどんな音楽を演っているのだろうか。他にもスイス出身のピアニスト/ヴォーカリスト Fabienne Ambuhl によるトリオ「Glitterwoods」などが新鮮。

http://www.fabienneambuehl.com/
http://www.traumton.de/label/releases/?id=279

 


Morten Qvenild「Personal Piano」

http://www.grappa.no/en/hubro/morten-qvenild-personal-piano-lp/
Personal Piano

音響装置としてのピアノも進化している。Aphex Twinの「Computer Controlled Acoustic Instruments pt2 EP」も良かったし、これはノルウェイで生まれた今年最も(といっていい程)美しいピアノ・ミュージック。一方で、プリペアド・ピアノ界の奇才Hauschkaは、日本での演奏による初のライブアルバム「2.11.14」(マイクはすべてピアノの中に置かれた)を、そして音響ジャズのベテラン The Necks もコンスタントに18枚目の新譜「Vertigo」をリリース。もちろん全1曲。

http://warp.net/releases/computer-controlled-acoustic-instruments-pt2-ep/

http://northernspyrecords.com/music/vertigo/

 


Steven Wilson「Hand. Cannot. Erase.」

http://handcannoterase.com/

Hand. Cannot. Erase.

(かつてはプログレッシブ・ロックと呼ばれた)構築美の探求と現代社会の背後に潜むテーマ。爆発のためには持続が必要。2015年の「The Dark Side of the Moon」といえるかもしれない。 今年は Steven Wilson 率いる Porcupine Tree の名ドラマー Gavin Harrison もソロアルバム「Cheating the Polygraph」をリリースした。こちらは、マリア・シュナイダーや狭間美帆(いずれも今年新譜を発表した)を彷彿させる、正統派ラージ・アンサンブル・ジャズ。

http://www.discogs.com/Gavin-Harrison-Cheating-The-Polygraph/master/824822

 


Magma「SLAG TANZ」

http://www.magmamusic.org/en/index.php

SLAG TANZ
http://www.magmamusic.org/en/index.php
結成40年を迎えてコバイア語と共に健在、どころか今なお進行中(リーダーのクリスチャン・ヴァンデは今年67歳!)。 6月に行われた2010年のフジロック以来5年ぶりの来日公演も圧倒的だった。アンコールも含めて1ステージたったの4曲。その中の一曲がこの最新アルバムの全曲演奏30分超。今年はさらに、全12枚組のライブ「Kohnzert Zund」も発売された(既存盤のリマスターに加えて、近作を収録した未発表の2枚は特に刮目すべし)。
http://v2.seventhrecords.com/en/magma-19/kohnzert-zund–1236.html

 


VAK「Aedividea」

音楽界の驚異の新人の2ndアルバム。Magmaの継承という側面だけではなく、よりヘテロジニアスなブランチの成長。1stに比べてさらに求心力と拡張性を兼ね備えてきた。VAKに限らず、多くのMagma派生音楽が今なお生まれ続けている。

 


Troyka「Ornithophobia」

Ornithophobia

http://www.troyka.co.uk/

http://www.naimlabel.com/recording-ornithophobia.aspx

2ndアルバムの「Moxxy」をジャケ買いして知ったプログレジャズバンドの4枚目。ポストロック的なエモーションと、アンビエントからレコメン系まで多重な構造を兼ね備えた多層性の中から浮かび上がるグルーヴ、といえるだろうか(言葉で表そうとすれば)。

 


Holly Herndon「Platform」

http://www.hollyherndon.com/
http://hollyherndon.tumblr.com/
Tyondai Braxtonの「Hive1」、Battlesの「La Di Da Di」もあげたかったが、その方向性でいけば、やはり何といってもこのアルバム。Holly Herndo はポスト・ビョークか、はたまたポスト・マドンナか、とも噂されるエレクトロニカ+ヴォーカル界の才媛。今日におけるアバンギャルドの継承者。サウンドだけでなく、ビデオも要チェック。

http://www.beatink.com/Labels/Beat-Records/Tyondai-Braxton/BRC-469/


Donny McCaslin「Fast Future」

Mark Guilianaで始めれば、やはり最後はDonny McCaslin。前作「Casting for Gravity」がポスト・ウェザー(ザヴィヌル)の名盤として個人的に超はまっただけに、この新作でも速くて太いDonnyのサックスの音色を堪能できる。ドラマー絡みでもう1枚あげるとすれば、Antonio Sanchezの「Meridian Suite」。じわじわと盛り上がってくるこのアルバムの感覚もまた、もうひとつの構築美。
http://www.antoniosanchez.net/


 

次回のベストアルバムは、シーンへ衝撃的登場を果たし、未だ多くの謎に包まれている京都発ドローン・バンド Supersize meがセレクトしてくれる。楽しみにしていて欲しい。

 


■ 久保田晃弘(くぼたあきひろ)
1960年生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コース教授/工学博士。東京大学大学院工学系研究科船舶工学専攻博士課程修了。世界初の芸術衛星と深宇宙彫刻の打ち上げに成功した衛星芸術プロジェクト(ARTSAT.JP)をはじめ、バイオアート(BIOART.JP)、ライブコーディングと自作楽器によるライブ・パフォーマンスなど、さまざまな領域を横断・結合するハイブリッドな創作の世界を開拓中。著書に『200ジャズ語事典』(立風書房/共著/1990年)、『200ジャズCD21世紀へのジャズ』(立風書房/共著/1995年)、『消えゆくコンピュータ』(岩波書店/1999年)、『ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック』(大村書店/監修/2001年)、『FORM+CODE―デザイン/アート/建築における、かたちとコード』(BNN新社/監訳/2011年)、『ビジュアル・コンプレキシティ―情報パターンのマッピング』(BNN新社/監訳/2012年)、『Handmade Electronic Music―手作り電子回路から生まれる音と音楽』(オライリー・ジャパン、監訳、2013年)、『[普及版]ジェネラティブ・アート―Processingによる実践ガイド』(BNN新社/監訳/2014年)など。11月25日には『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。―未来を思索するためにデザインができること』(BNN新社/監修、2015年)が発売。

https://www.facebook.com/hemokosa

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